不動産査定の評価基準
オンライン一括査定を利用すると、複数の不動産会社から連絡が入ります。
会社により販路や収益の考え方が異なるため、当然見積り金額には差が出てしまいますが、彼らも当てずっぽうに金額を算出しているわけではありません。
なぜならば、不動産会社には「不動産の査定額を顧客に提示する際にその根拠を明確にする義務(宅地建物取引業法の第34条の2)」があるためです。
つまり、査定依頼を受けた各社は一般的に用いられる査定基準に従い評価額を導き出す必要があり、言い値で金額を提示することはできません。
当ページでは、不動産査定で損をしないために「どのような査定方法が用いられるのか」「どのように交渉すべきなのか」にフォーカスを当て、解説してまいります。
不動産の主な査定方法は3つ
算定基準は定められているものの、冒頭でもお伝えした通り不動産会社によって得意ジャンルや販路は異なるため、見積り額にはどうしても差が出てしまいます。
また、金額に差が出るもう一つの要因としては「査定方法の違い」が挙げられます。
不動産査定で損をしないためにも、以下の3つの算定方法は覚えておくと良いでしょう。
原価法
原価法とは、文字通り「不動産の原価」を基に金額を算出する方法です。
査定する不動産を再度同じ条件で購入する際の金額(再調達原価)を試算し、そこから建物の経年劣化等を減価修正し、査定額を導きます。
例えば、再調達コストが土地1,500万円+建物1,500万円=3,000万円となり、そこから築年数分や劣化分を差し引くイメージです。(仮に減価修正が500万円だとすると、査定金額は3,000万円-500万円で査定額は2,500 万円となります。)
一戸建てやガレージハウスなど、土地と建物がセットになった物件に適応されることが多い手法で、反対にマンションや既成市街地では土地の再調達コストが求め難いため利用されるケースは少ないと言えます。
収益還元法
その物件が「将来的に生み出す収益」をベースに価格を逆算する方法で、主に賃貸向けのマンション・一棟アパート・商業物件などの賃貸用物件や事業用物件など投資用不動産の査定に用いられる手法です。
収益還元法にはさらに直接還元法とDCF法の2種に分類されます。
直接還元法とは、1年間の収益を利回りで割ったものに100を掛けて収益還元を導き出す手法で、例えば「年間収益300万円(利回り8%・経費30万円)」の物件があった場合は「(300万円-30万円)÷0.08=3,375万円」となります。
一方で、DCF法は不動産により得られる収益に加え、一定期間後に売ることを想定しその売却益を併せて算出する手法です。
予測のブレが少なく、買い手側はより低リスクで買い付けを実施することができる点が特徴と言えますが、売却益を現在価値に置き換えるなど算出がより複雑となります。
取引事例比較法
取引事例比較法は、読んで字のごとく「過去の類似物件取引の実績」から不動産の価格を算出する方法です。
実態や相場との乖離が少ない(不動産の価格は常に変動しているため)というメリットがあり、国内における住宅査定はこの取引事例比較法が最も多く用いられています。
相場を基に算定がなされるため、売り手・買い手ともに説得力のある査定方法と言えますが、査定する不動産会社によって評価幅が大きいというデメリットもあります。
どのような算定方法を用いているのかが分からないため、複数社の査定見積を比較するのは重要なことと言えます。
不動産一括査定サイトなどを上手に活用し、必ず比較・検討するようにしてください。
不動産会社から金額提示があった場合は、どの算定基準を用いたのか程度は確認しておいてもよいでしょう。
路線価とは
路線価とは、簡単にいうと道路を基準に算出した価格です。
国税局では道路に面する土地1平方メートル当たりの価額を数年ごとに発表しており、当該価額のことを路線価といいます。
路線価は相続税・贈与税等を算出する際に用いられる算定方法ですが、土地の大まかな価格算定にも用いられています。
なお、路線価は実勢価格(売買された金額)の80%程度と言われておりますので、路線価に1.2倍を掛ければ大まかな実勢価格を知ることが可能です。
路線価が知りたい方はこちら
国税庁|路線価図・評価倍率表マップまずはご自身の所有する土地に面する道路の路線価をご確認ください。
千円単位での表記(440と記載されていれば440,000/㎡)ですので、所有する面積を掛けてみれば簡単に金額を算出することができます。(※末尾のアルファベットは借地権割合を示しており、C=70%/A=90%等が定められています。)
オンライン不動産査定で複数社を比較するのはもちろんですが、査定額の根拠を知るのも大切なステップです。
事前にどのくらいの金額になるのかを知っておけば、交渉を有利に導くことが可能です。
的外れな見積もりを見破る方法の一つとしても覚えておいて損はありません。
投資用物件の算定・評価方法
次に、マンションやアパートなどの「投資用物件の評価方法」について解説いたします。
前述した通り、不動産投資を目的とした物件の売買では「収益還元法」が主に用いられ、物件そのものの物理的価値よりも将来的に生み出す収益に対して価値が決められます。
特に東京都心部などの物件は賃料相場が安定しており、買った値段以上で売れたという話もあるくらいです。
概ね今後10 年で発生すると予想される家賃収入をベースに査定価格を算出するため、買い手側には収益予測を立てやすいというメリットがあります。
なお、住宅とは異なり以下の点がより重要視されますので、投資用物件を売却しようとお考えの方はチェックしておくと良いでしょう。
立地は最も重要な要素
Point1もちろん居住用物件も同様ではありますが、投資用物件ではより「立地」が重要視される傾向にあり、単純に駅に近いかどうかだけではなく、今後数十年に渡って需要があるエリアなのか・どのように発展をしてゆくのか等についても考慮されます。
特に単身向け物件では周辺地区の人口予測が影響しやすく、減少予測の地域では不利な査定結果が出る可能性も否定できません。
逆に福岡などは微増でも若年齢の人口流入が期待されており、安定した物件価値を維持し易いと言われています。
また、居住需要が上がりやすい付加価値としては「大きな工場がある」「大学が近い」などが挙げられますが、企業の撤退やキャンパス移転のリスクが伴うため、駅までの距離に比べると期待するほどの査定増額に繋がらない点に注意が必要です。
中古物件では空室率も重要
Point2中古の賃貸物件を評価する上では「空室率」も重要です。
当然ですが、買い手側からすると購入時点である程度の収益を見込めるため、売却時点で満室またはそれに近い状態であれば査定額のアップへと繋がります。
さらに、過去の入退去実績がわかる資料があれば売却交渉を有利に進めることもできます。
「周辺の同等物件よりも需要が高い」「平均入居年数」などで物件の優良性をアピールできれば、より良い条件を導き出すことも可能なためです。
減価償却年数とメンテナンス状況
Point3不動産や車などは、国税庁が定めた「償却年数」に則って毎年少しずつ経費に計上せねばなりません。
これを「減価償却」といい、例えば1000万円で建物を購入し20年で償却する場合、毎年50万円を経費として計上できるため、その分節税に繋がると言えます。(減価償却は消耗資産である建物にしか適応されず、土地は対象外です。)
減価償却年数は税法により細かく定められており、築年数や建物構造(木造or鉄筋コンクリート等)によっても異なりますので、不動産査定では土地建物の価値比率(建物割合)も価格に大きな影響を及ぼします。
また、中古物件では設備のメンテナンス状況や劣化具合も重要です。
外観や共用部であれば目視で確認ができますが、肝心の室内は入居者がいるため、原則立ち入り不可と考えねばなりません。
各部屋のメンテナンス記録や入退去時の修繕内容の記録、直近の入居時の写真等があると信頼性を裏付けすることができます。
居住用物件と投資用物件では査定で重要視されるポイントが異なります。
延いては後述する「売り時」も異なって参りますので、タイミングはしっかりと見定める必要があるでしょう。
直接買取方式と仲介方式の違い
不動産査定では、不動産会社による「直接買取方式」と、査定価格を元に買い手を探す「仲介方式」の2パターンに大きく分かれます。
不動産は、固定資産税やメンテナンス費といった維持費の他、登記手数料やクリーニングなどさまざまな費用が発生するため、売れずに残ってしまう可能性を考慮すると直接買取の方が高リスクです。
そのため、直接買取方法は仲介方式に比べて査定額が低くなりやすく、金額を重視するのであれば仲介方式がベターと言えます。
ただし、仲介の場合は前述した通り3つの算定方式による「大まかな金額」で販売価格を決めるため「いつ・いくらで」売れるのかが分かりません。
一方で、直接買取方式はすぐに代金が決済される(仲介方式の場合は買い手がOKを出したタイミングで最終的な値段が決まる)ため、売却後を見据えて予定を立てることが可能です。
査定額を重視するなら仲介方式、売却を急いでいるのであれば買取方式を選ぶと良いでしょう。
できるだけ値下げせずに売るには
高額査定を得るためには、不動産会社との交渉が必須です。
まず、価格交渉をする前に複数社に不動産査定を依頼し、高額売却に自信のある不動産会社を絞り込みましょう。
もちろん、希望価格が高すぎると買い手に見向きされない恐れがあり、実態価格とかけ離れた査定額では意味がありません。
そういった意味でも、事前に複数社から見積りを取っておくことが重要です。
しかしながら、不動産会社は売買が成立しないと仲介手数料が得られないため、中には「今がタイミングです」「値引きしてでも売ったほうが賢い」などと早期売却を促す悪徳不動産会社も存在します。
安易に値下げをしてしまう方も少なくありませんが、過去の売買相場や査定額算出の根拠がしっかりしているのであれば、強気に売りに出す姿勢が大切です。
予め期限を定めて「半年以内に希望価格で売れなかったら100万円ずつ値下げする」など計画的な価格設定をすることでその場の感情に流され、売り急いでしまうリスクを軽減できます。
交渉材料をより豊富に
希望価格を極力下げないためには、買い手側に「価値のある物件」と思ってもらえるようにせねばなりません。
例えば
- 水回り/外壁塗装等の大規模修繕が行われている
- 施工時の写真など粗悪な物件で無いことが証明されている
- 地盤調査/耐震証明等による安全性確保
などは、建物の品質が高い・メンテナンスがしっかりとなされていることの証明となります。
また、基本的に限界まで値引きは行わない方向で交渉を進めつつも、いくらまでなら下げてもよいかについては予め決めておいた方が良いでしょう。
内見や交渉時に買い手に迷っている素振りがあれば「今日この場で購入を決意してくれるなら◯◯◯万円で売ります」と、ここ一番で宣言するのがオススメです。
時間をかければ希望価格に近い金額で買ってもらえる可能性は上がりますが、時間を要せば要するほど固定資産税やメンテナンス費用が嵩んでしまいます。
多少の値引きで売れるのであれば双方にメリットがあると言えるのではないでしょうか。
さらに、築年数も増えていってしまいますので、不動産価値そのものの価値を下げることにも繋がります。
不動産の売り時・買い時
どんな物であっても価値・価格は常に変動するものですが、中でも不動産は価格の変動が顕著かつ大きく表れ、売り時・買い時を見定めれば数百万円単位で得することもある反面、損を余儀なくされることもあります。
「バブル期に数億円もの大枚を叩いて購入した郊外住宅が、今となっては目も当てられない査定額」なんていうのは、買い時を誤り、売り時を逃した典型例ではないでしょうか。
しかしながら、バブル崩壊では「損をした側」のイメージだけが強く残っておりますが、逆に大きく得をした人がいることもまた事実です。
現代でも大手銀行マンを中心に湾岸沿いの高層マンションを投資目的で購入、数年で売却して20〜30%の利益を上げるなんて話も珍しくありません。
不動産を売るベストなタイミングは?
残念ながらベストなタイミングを一概に申し上げることはできません。
なぜならば、地価の上昇・下降は地域によっても異なり、全く無価値だった土地が都市開発等によって数百倍・数千倍になることもあるためです。
例えば、毎月国土交通省が発表している「不動産価格指数」では、住宅・戸建て・マンションにどの程度の変動があったかを確認することができます。(不動産価格指数とは、不動産価格の動向を数値化したもので、実際の取引価格を基に算出しています。)
住宅地(市街化区域内の居住用の土地)・戸建てはほぼ横ばいとなっておりますが、マンションは大きく上昇していることが分かります。
特に都心部のマンションの口頭には目を見張るものがあり、まだしばらくは続くものと考えられています。
戸建てもマンションに引っ張られるように上昇しており、日本全体の不動産価格は上がり続けていると言って良いでしょう。
一方で、これらの変動の影響が少ない物件も存在しています。
例えば、港区の物件は依然より人気が高く、有名建築家が設計したマンションなどは新築よりも高額で売れたなんてこともあります。
影響が少ない物件であれば「売りたい時が売り時」と言えるのではないでしょうか。
物件用途でも売り時は異なる
居住用物件・投資用物件でも、それぞれ売り時は異なります。
築年数を経るごとに不動産査定価格や残債務(ローンを組んでいれば)が減少してゆくのが一般的ですが、あまりにも売却が早いとローンだけが残ってしまいます。
返済スピードや新築or中古どちらで取得したのか等にもよっても異なりますが、おおよそ15年程度を堺に売却益を見込めるバランスになることがほとんどです。
そのため、急ぎで手放さなければならない特段の事情がある場合を除き、損益分岐点を見極めた上で手放すことをお勧めいたします。
ただし、不動産査定自体は無料で行えますので現時点の正確な価値を知りたい方は試しに一括査定を申し込んでみるのもよいでしょう。